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ジーン シャノン 最近の作品

横川秀夫 訳     

降雨を待つ 

「而して過去を捨て去ること甘美なり」
十世紀中国古事

風に乗る
スペアミントの芳香

過ぎし日の日記を読む

昨年の悲しみは
蝋燭の火となって燃え

薔薇の咲き盛り
灰のなかへと

テロリストの花三つ


空軍基地
倒され刈り取られた
ヒナギクの草むら

暗示 / 幻影


午後のなかば
屋根を伝う耳障りな雨音

金褐色の木々の下
女が虎にドングリの餌を食べさせている

青いボウルのなかの明るい泡だち
蜂のかげり

ベルの空洞のなかの
鳥のさえずりと炎

赤いポットの中のロザリオの木
その手のひら
緑色のヘビ

家の外側の道路は
静けさが響き

エタロンは開き
あの世へと入って行く
小さな出口

薔薇の心は
いつも陰鬱

復活祭の朝


世界はもはや雪と氷のおおわれることなく
光は薔薇から発する蜂のように上った

星々と明けの明星は私たちの家庭にまで届き
風はその芳香を発するエニシダの木を押し動かした

教会の鐘が鳴った

私たちはライラックスとザクロのワインの
キリストに会いたくなった

ハンターの肩の星章


昨夜、私たちはオリオン座を見つめていた

ある天文学者が私たちに言った
ベテルギウス星は
今夜
あるいは来週にでも
又は今かっら何千年後かに
超新星となって爆発するかも知れない、と

あるいは既に
そうなっているかも知れない、とも

けれど、その光が
私たちに届くのを
いったい誰が知りえるだろうか

水平線上にて


世界は神秘と光に満ち満ちている

揺らめく光は何かしら
スクリム織物みたいなものから漏れてきていて

私たちは
見えないものと見えるものの尖端上で震え

形体は変化し消滅し再び現れ
白い海のなかに波打ち

その影やそのお祭り騒ぎの夢と
共にある過去

信頼し得るものとは何なのだろう

私たちが心から切望する
幽霊のような煙とは
いったい何なのだろう

 

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