その枝々で夜をゆさぶる樹木のように 風のなかで揺れうごく言葉をもって 生命(いのち)よ、お前は何者であるかと尋ねながら 私は私の腕のなかにお前を抱きしめる。 いとおしみ そしてとりわけ むなしくも呼びかけ呼びかけする言葉をもって、 感覚とは何であるか、と私は詰問する コオロギの声をもって私をあざけり 星々の冷たい指をもって私の目を傷(いた)め 夜は、私の叫びと私自身とを打ちのめす。 また、感覚よ、お前は言葉を発し そしてその言葉は貝のようにそれ自身を閉じる。 沈黙のなかへと沈みこみながら 訊かないほうが良いのだ。 イブを、リンゴを、蛇を覚えているか?と 私は私自身に繰りかえす。 イブは尋ねなかった、イブは訊きはしないし 絶対に耳を傾けもしない。 |